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「春休みって、いつからいつまでだ?」
突然降って湧いた疑問に思わず、カレンダーに話しかけていた。
子供の時の流れ方と大人のそれでは、体感速度がまったく違う。
自分もいつかは大人になるのだということに思いもつかなかった小学生時代。
早く大人になりたくて背伸びをしていた中学生時代。
多感な思春期だったと今だからこそ気付ける、高校生時代。
好奇心を抑えきれず、研究旅行へ旅立った大学時代。
これは、ベイブレード研究所に就職した今もあまり変わらないか。
いつまでも若いつもりだった。
いや、まだまだまだ俺は若い!
まぁ、やっと中学生になったタカオやカイのピチピチ具合にはもちろん負けるけど。
ピチピチプニプニ。
カイの素肌はツルツルしていて心地いい…。
話を戻そう。そう、春休み。
小さい頃はあれだけ心待ちにしていた長期休みも、社会人になってしまえば立ち消えるわけで。
いや、春休みってものがあることは分かっているけれど。
海の日とか、天皇誕生日とか。
休みのスタートを告げる分かりやすい祝日がないと、なかなかその始まりは掴めないわけで。
カイも、カイだ。
春休みになったのなら、そう言ってくれたらいいのに。
気付けば、目の前に迫った4月。
スタートを拾い損ねた春休みは、その存在すら朧気で。
カイが学校に縛られない、自由な状態っていう記憶もいつの間にか日々の仕事に忙殺されていて。
いや、仕方ないんだよ。
どっちにしろ年度末でバタバタしてて、のんびり構ってもいられないんだし。
でも。でもなぁ。せっかくの休み。
少しぐらい、泊まりがけでイチャイチャとか、
軽い旅行とか。お帰りなさい、あなた。晩御飯にする?お風呂?それとも…?とか
楽しみようはいくらでもあろうというもんじゃないか!
あぁぁ。
春休みはいつ終わるのかな。
お花見ぐらい行けたらいいな。
まぶしいなぁ
カーテンの隙間から忍びこむ朝日の戯れに
木ノ宮仁は薄く目を開けた
仁の顔にサラサラと触れるカイの薄青の髪は心地よく
二人分の体温を暖かく抱きしめる毛布を早々に手放すには惜しい
今日は土曜日だから、朝から時間を気にするなんて野暮なことはしない
自分の腕の中で丸くなるカイを起こさないように
カーテンを閉めるべく緩やかに動くが
秋も深まった朝のひやりとした空気に
伸ばしかけた剥き身の腕を慌てて引っ込めた
仕方ないこのまま
降り注ぐ光の中、眠る横顔を眺めながら
カイの目覚めを待とう
そのうちに気温も上がるだろう
カイの吐息を聞きながら流れる時は限りなく穏やかだった
大切な一瞬一瞬が自らの手の中にある実感
こんなときが長く続けばいいと思う
永遠を願う、
その瞬間があるということこそが
何ものにも変えられない幸せだと知っている
カイはどんな永遠を願うのだろう
最近の子供は割と冷めてるから
「永遠」なんて信じないのかもしれない
そうでなくてもカイは現実的な子だから
永遠を口にする仁を鼻で笑うかもしれない
それでも惜しみなくカイの幸せを想う
カイが望む永遠が穏やかなものであるように祈る
願わくばそのときを共有できるように
あと1時間もしないうちに彼は
意志の強さがにじみ出る瞳をしばたかせながら目覚める
熱い視線を感じて不機嫌そうに
気恥ずかしそうに
何見てるんだ貴様
掠れた声で呟くんだ
早くそんなカイを見たいような
それでもこの時をまだ楽しみたいような
くすぐったい気持ちで
起こさないように
でもギュッと腕の中のカイを抱きしめた
カイとの幸せ
それこそが
君の望む永遠